急行東海1号の思い出

初めての一人旅に出た日を思い出した。

それは昭和54(1979)年3月春日の朝。
母の故郷である静岡に向かうため、品川駅九番ホームにいた当時小学四年だった私は初めて急行券なるものを手にし “湘南電車” が来るのを待っていた。

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(※写真の時刻表は昭和59(1984)年5月号)

背負っていたリュックサックをおろし、持参した時刻表と旅の計画を書きこんだ大学ノートを取り出して入線時刻を改めて確認する。

程なくして165系型車両で編成された急行東海1号が入ってきて、他の乗客と共に乗り込みボックス席に座った。

その四人掛けの席には、私の他お婆さん、おじさん、背広のお兄さんといった人たちが座り、旅の同乗者となった。

品川を定刻の9時に出発した東海1号は、東海道本線を西に向かった。
年端もいかぬ少年が一人で乗車していることを奇異に感じたのか、同行の三人は気さくに私に話しかけてきて旅が愉しく思えた。

背広のお兄さんは、私に道中気をつけるように告げ、持参した風呂敷を手に横浜近くで下車した。
お婆さんとの会話は今となっては記憶ないが、沼津まで同行したおじさんとはよく話した。
思い返せば齢、三十代だったと思う彼は、かなりの鉄道好きで、同行の少年も鉄道好きと見るや、これまで巡った旅の思い出や列車の車両解説、路線の歴史など色々話をしてくれた。
私は大学ノートに、おじさんの話をこと細かくメモした。

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(※写真は中央西線の普通列車 1997年撮影)

時間はあっという間に経ち、右手に谷津山(やつやま)が見え終着の静岡駅に着いた。
ボックス席には私一人だった。

その後、駅北口に出た私は、安西にある伯母宅に向かい歩き進んでいった。

私はこの一人旅を心の中に宝としてしまい、30年以上経った今でも当時の情感を忘れることなく人生の原点のように大事にしている。

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