【大戦中の特殊船】1 陸軍建造の傑作輸送船

本ブログの戦記シリーズとして、特殊船を取り上げたいと思います。

その第一回目(二回以降続くか否か!?)は、戦前戦中にかけて帝国陸軍が建造をした傑作輸送船を取り上げたいと思います。

摩耶山丸

帝国陸軍は、大戦前の昭和12(1937)年、揚陸作戦を専門とする特殊輸送船「神州丸」(MT船と称される)を建造しました。
本船は、現代の強襲揚陸艦の先駆者とも言うべく、当時としてはかなり野心的な輸送船でした。
(注:陸軍のフネであるため、“艦” とは名乗らず)

基準排水量が8千トンで、外見こそ標準的な貨物船と同じスタイルをしていましたが、内部構造は全く異なっていました。
船体内に、上陸用舟艇(大発)23艇が収納され、それら舟艇をいざ作戦開始というとき、船尾および両舷に備えられた大型ハッチを開き、兵を満載した状態で一斉発進ことが可能となっていました。
また、デッキにも20余りの舟艇があり、内部からの出撃後にそれらをクレーンで降ろし、後続部隊として作戦参加させられたといいます。

この迅速な揚陸戦方式は、まさに強襲揚陸であり、第2次大戦中の世界各国を例にとっても他になく、画期的であったことは間違いありません。

神州丸は、日中戦争における実戦参加で良好な結果を得られたとして、陸軍は後続船10隻の建造計画を決定、昭和17(1942)年から20年にかけて摩耶山丸、玉津丸、吉備津丸、摂津丸、日向丸、高津丸、あきつ丸、にぎつ丸、熊野丸の計9隻を完成させました。

なお19年以降に建造した同型船は、丙型と称される上甲板に全通式飛行甲板を設置した「あきつ丸」などもあり、これはまさに陸軍の空母とも言うべき船でした。

しかし残念ながら大戦中のこれら特殊輸送船は、いずれも主な任務が兵員の海上輸送であったようで、本来の強襲揚陸には使われなかったようです。

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引用参考文献:
(1)『商船戦記』大内 建二 光人社、2004年12月12日発行
(2)『日本軍小失敗の研究』三野 正洋 光人社、2005年8月15日新装版発行

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